なにがあっても全部ネタだよね。

18歳女子が韓国に留学しながらいろんなものを観察してみる

韓国人彼氏との初デートは刑務所…!?

十八歳といえば恋したい真っ盛り、男も女も盛りに盛っている。そんな時期を生きる青少年たちは、いったいどんな初デートをするのだろう。

夏ならば海へいったり、遊園地で汗だくになりながらアイスを食べてもいい、秋ならば紅葉の綺麗な公園に行って、冬は凍えながら綺麗な夜景を見に行きたい。サルもびっくりするやりたい盛りの男子たちは、2人の夜のことを考えて一人にやにやしてしまったりするのだろうか。

とにかく、十八歳というのは青春真っ盛りにちょっと大人の味も味わえる青春の中の一番刺激的で楽しい時期なのである。

私はそんな十八歳のときに韓国で恋人ができた。出会いは韓国の語学学校だった。私は韓国語を学びに来た留学生、彼氏は私のクラスの担任だったのである。ドラマや漫画の中で、先生と生徒の恋といえば、禁断の愛とかなんとか言ってやたらとドラマチックな恋の形として描かれることが多いが、私たちは別にそんなことなかった。

そもそも、付き合ってからドラマチックなことがあったことがない。なんてったって、私たちの初デートは、刑務所だった。

私たちがまだ付き合う前であったが、韓国に来てから韓国と日本の歴史に興味がわき、当時担任であった今の彼氏に、韓国が日本の植民地時代の歴史がわかる本や施設はないかと聞いてみたのである。先生は”西大門刑務所跡”という施設を教えてくれた。西大門刑務所とは、日本が韓国を統治していた時代に作った刑務所である。ここには日本に対して反逆的な行動をとった韓国人が収容されていたらしく、環境やそこでの労働はそうと劣悪なものであったそうだ。拷問の展示もあるといって、先生が教えてくれたのだが、話を聞いただけでビビってしまい、泣き目になってしまった。行きたいけど、怖いし、でも行きたい、どうしよう、と思っていたら、先生が一緒に来てくれるということになった。なんと先生は大学で歴史と文学を専攻していたらしく、韓国史に関しては何でも聞けという韓国史のエキスパートというではではないか。

理系で日本史もまともに知らない私は頼もしい助っ人の登場に心の中でガッツポーズをした。先生に時間外労働させちゃって申し訳ないなあと思いつつ、「お、これは私にとって男の人との初めてのお出かけというやつではないか?」とワクワクしている自分もいた。

しかし、その時は何とも思っていなかったが、初めての男性とのデートが刑務所ってどうなのよと今になって後悔したりもする。バージンデートが刑務所になった私には、これからもロマンチックな出来事など一生ないのではなかろうか。

 

刑務所デート(?)当日、地下鉄に乗って移動しているとき、先生に「日本の武士とか軍人は偉い人が亡くなったとき、どうして下の人まで自殺したりするの?」というディープな質問をされた。「忠誠…というやつですかね…」という私の自信のない回答に先生はわかったようなわからなかったような表情をしていた。

 

平成っ子の私には難しすぎる質問にひたすら悶々としていたら、いつの間にか刑務所前の駅についていた。あるいてすぐの刑務所の中に入ると、私もさすがに少し怖くなった。ここで韓国人が、日本人に殺されたり拷問されたりしていたのかと思うと、鳥肌が立った。刑務所にはいろいろな施設があった。牢屋や拷問室、処刑場等、どれも残酷極まりなく、日が全く入らない真っ暗な独房や、人間が考えたとは思えない拷問器具、処刑場の近くには抜け道のようなところがあり、処刑した人が拷問されていたという事実を隠ぺいするためにそこから死体を運び出したそうだ。

これを日本人が考えたのかと悲しくなった。こんなに残酷なことができてしまうことが不思議でならない。悲しくて悲しくて泣きそうになった。先生はそんな私の様子を察したのか、ただ黙って私の横にいてくれた。

その日は、本当に暑い日だった。七月の終わりごろだったので、風の通らない牢屋は廊下でさえとても蒸し暑かった。汗だらだらの私を先生はうちわであおいでくれた。

それも、あたかも自分を扇いでいるかのようにして、さりげなく扇いでくれている姿に「ああ、この人はいい人だなあ」と思った。私が先生の反対方向に行くと、うちわを持つ手も変わるのだ。

 

十畳くらいの少し大きな牢屋があった。そこには何十人もの韓国人がすし詰め状態で入れられ、汚物もあふれる悲惨な状況であったそうだ。人間はどこまで悲惨なことができるのだろうと、恐ろしい。私もこの時代に生きていたらこういうことができてしまうのだろうかと思うと恐ろしいのだ。でも同時に、私が暑いのを横でこっそり扇いでくれているのも人間なんだなあと思った。残酷なことをしてしまうのが人間なら、人間にやさしさや愛を分け与えられるのも人間しかいない。隣にいる先生の優しさを感じながら、負の遺産の見方に気が付いたような気がした。

 

そのあと、先生とおそばを食べて、自分の家に帰った。

あの日のことは、刑務所は怖かったが、楽しい思い出として心に残っている。いま考えても、暑いし、汗で化粧はどろどろになるし、刑務所だし、ロマンチックなことはなかったと思うが、それでも刑務所の初デートも悪くなかった。